投手

11川上憲伸

 中日ドラゴンズ右のエース。徳島商-明治大-中日。

 右の本格派。右投手には珍しいスローカーブと、MAX140キロ代後半のストレートのコンビネーションで勝負する。日によってコントロールの良し悪しが違う。高校、大学と注目されつづけ、ほぼ順調に成長を続けているが昨年は二年目のジンクスにどっぷりはまった。今年も難聴と、ついてないように見えるが、もともとさほど健康なタイプでもないのでこんなものだろう。なぜか全国的には真面目な人柄で売れているようだが、それはただ地方球団もいいところの中日にいるからであり、実際は乗せられると調子に乗ってしまうようなお調子者で、あるいは中日以外の球団では練習しなかったかもしれない。昨年の二年目のジンクスなんかはこのページでは予想していたことでもある。

 本格派でさほど体力もなく、なぜか真面目に見られているが若干お調子者で、調子の良いときは打てそうもないが悪いと自滅、そのわりにイニング数を稼いでバリバリ登板、となると若干今中を思い出さないでもない。ということはやるべきことはただ一つ十分な投げ込みと十分なケアだ。成長の場合によっては今中以上に人を馬鹿にしたピッチング(最高の誉め言葉)ができる可能性を秘めている。

12日笠雅人

 左のワンポイント中継ぎ。旭川龍谷-道都-新日鉄君津-中日。

 契約金ゼロ志願で知られる人。実際に契約金ゼロで入団し、新人の時から左のワンポイントとして活躍、見事年棒大幅アップを勝ち取った。気持ちで投げるタイプではあるが、抑えている理由は強気のピッチングという種類のものではなく、ただのバランスの悪い曲者としてであって、右打者にはからっきし弱い。しかし、どういうわけか左打者に対しては不思議なほど抑える。おそらくはリリースポイントが打者から見て特徴的であるんだと思う。球は速いほうではないが、フォームからしたら出ているほうだろう。

 左投げ右打ちの変り種だが、リードする腕が利き腕であることは理論的には望ましいことだ。じゃあ何故スイッチヒッターにならなかったのか、ということなのだが、たぶん気まぐれだろう。

13岩瀬仁紀

 球界屈指の左セットアッパー。西尾東-愛知大-NTT東海-中日

 初年度からセットアッパーとして10勝をあげ、優勝の功労者となった。140キロ代後半のストレートと、水平に逃げるスライダーを、低い重心から体を巧くひねって投げてくる。もちろん左打者には強いが、よほど巧い打者でない限り、右打者にも裁かせないだけの実力と球威、ウイニングショットを誇る。

 大学時代は外野手で愛知大学野球リーグでは通産安打記録の第二位を持つほどの実力だったが、社会人で投手転向した。なんでも熱烈な中日ファンで、可能性を追っかけて投手転向したらしい。結果としては正解だったわけだ。統計的にパワーヒッターは背筋力を、アベレージヒッターは体のひねりを使って投げることが極めて多い。松坂などは典型的なパワーヒッターだが、岩瀬投手はひねり、背筋力ともに使えている投手で、筋力が発達したときから投手をやったのが巧く出た好例といえるだろう。

14今中慎二

 球史に残るサウスポー。大阪桐蔭-中日。

 Max148キロのストレートと、大きく割れる縦のカーブ、視界から消えるスローカーブ、そしてストレートとまったく同じ腕のフリから来てストンと落ちるフォークボールなど、全ての球がウイニングショットになるという、プロ野球至上屈指のサウスポーだった投手。性格的に強すぎて、自らを頼むところが大きく、調整もまったく独自で、ノースロー、アイシングレスなどの調整法を行い、ピンチになると直球で押すという頑固な一面があった。それが良く作用している間は良かったが、結局左肩を壊しているところを見ると、性格は欠陥であったといわざるを得ない。 フィルディングもよく、バント処理など巧かったが、バントはバットを引いて殺そうとする癖があり、ポップフライを良くあげた。このあたり、自分の感覚に絶対の自信を持っていることを示すデータといえるだろう。また、変化球はストレート、フォーク以外は不思議なくらい覚えられない。

 現在は二軍のローテーション投手として活躍しているが、まだストレートにこだわっている様である。もともとコントロールだけでも飯が食える投手なので、変化球、ストレートともに小細工しないでやって欲しい。おそらく、135キロも出れば十分10勝できるだけのものを持っていると思う。

16山田洋

 万年若手の右本格派。大垣工-日通名古屋-中日。

 強気のピッチングが身上でありながら蚤の心臓であるわけのわからない右の本格派。コントロールも悪ければ、毎回反省点も出ているのに前向きなのが救いか。いっそあれダマを武器に、真中に思い切り投げていけるだけの度胸が欲しい。右の本格派にありがちなパターンで、良いときはめちゃくちゃ良いのに、悪いときぜんぜん駄目で、そのうえあまり良いときがないという困った投手だが、良いときがあまりにも良いので、ずっと期待されてしまっている。

 そういう投手は有無を言わさず思いっきり投げればいいのだが、ランナーを気にするなど、丁寧すぎるところがあり、ちょっとでも悪いところが出るとズルズルつかまってしまう。いっそセットポジションでも強く投げれるようにモーションを変えたほうが良いと思う。どうせコントロールなんてもともと悪いのだから。

17武田一浩

 98年最多勝の右ローテ投手。明大中野-明治大-日本ハム-ダイエー-中日

 日本ハム時代は最優秀救援投手となったが、自身の怪我、松浦、白井の台頭により先発転向、その後ダイエーへFA移籍し最多勝投手と実績は申し分ないが、通算成績は81勝にとどまり負け数も多い(86敗)投手である。もともとが中継ぎ向きの、使い減りしない肩を持ち、体のやわらかいひねりから似たようなフォームでストレートと変化球を投げ分ける。小気味良いテンポが最大の武器。

 さぞかしコントロールがいいように見えるが実はさほどにコントロールが良いわけでもなく、またスタミナもさほどない。何より体全体を使って投げるので一部分の負担が少なく、すさまじい投げ込みにも耐えられるわけだ。こういった投手は、体を支える下半身が生命線だが、武田投手の場合ある程度疲れた状態から戻った状態が一番良いようだ。つまり、中継ぎか、ある程度の練習後の投球、あるいは球数100球をメドにして中四日登板させるのが一番良く、体全体を使ったのテンポ良い投球が生きる。。そういった観点から見ると、去年の開幕後連続完封などは明らかにできすぎで、思った通り反動が来て、最終的に負けが先行している(9勝10敗)。投げ込みが大好きな人で、そういった意味からも自身を良く知っているといってよい。

18曹竣揚

 台湾の松坂などといわれる右本格派投手。文化大-統一-中日

 西武の許投手と並び、台湾の松坂・上原という呼ばれ方をした紛れもない右本格派。MAXは150を超えるといわれたが、日本では140キロ代前半しか記録していない。このあたり、157キロのストレートを引っさげて登場しながら、結局一年目は143キロで止まってしまったサムソンそっくりなのだが。ストレート、フォークボールがウイニングショットだが、台湾の場合、捕手のレベルがいいかげんなのでウイニングショットといってもたかが知れており、将来性を買った獲得であるといってよい。とはいえ、台湾ではノーヒットノーラン、MVP、ゴールデングラブなどを獲得しているほどの実績を持っている。(渡辺久信・郭源治がいまだに一線級のお国柄だが。)

 大型投手ながら、フォーム自体は小さくまとまっていながらも毎回少しずつ印象が違う、という良くわからない人で、将来的には緩急勝負ができる感じを受けた。腕の降り方を覚えればもう少し変化球が使えるだろうから、それまでガマンだろう。

19中山裕章

 キンちゃん。右投手。高知商-大洋-中日

 大洋時代に殺人的な起用のされ方をした投手で、最多勝、セーブポイントなどのタイトルを総なめにしかけたような投手(結局ノンタイトル)で、その後も数々の話題を呼んだがここでは触れない。なんといっても電化の宝刀フォークボールは健在である。ストレート、フォークは三振の取れるボールだが、おそらくは打たせてとったほうが良い成績が残せる投手だろう。テンポさえよく投げ込めれば安定した投球が期待できる。

 いきなりピンチで出てくるとクソ度胸があるのか妙にいいピッチングを演じて見せるが、自分でピンチを作るとそのままがらがらと崩れてしまうようだ。要するに、テンポが悪くなると駄目ということなのだが、そういう時はキャッチャーを変えてみたらどうなのだろうか、と個人的に思ったりする。

21正津英志

 右サイドハンド速球派。大野-竜谷大-NTT北陸−中日

 右サイドハンドの速球派。最近やたら増えてきたのだがどういうことか。正津投手の場合、シュートするようなボールではなく、ライズするタイプのボールで、スライダーも素直で曲者というタイプではなく、左打者には弱いようだ。決め球はもちろんシンカーだ。

 山田投手コーチ就任でシンカーに切れが出たとの事で、このタイプの投手にシンカーがますます遅く消えるようになったらいったいどうなるのかと思っていたら、ストレートが遅くなった様である。ストレートだけを磨くか、いっそスライダーに磨きをかけて変身を図るか、だが、根本的に先発を目指すのなら両立も何も合ったもんじゃない自分がどの位置で投げるのかより、自分がどういうピッチングをするべきか、そしてどういうピッチングを求められているかを知るべきだろう。

 落合英二とともにエイジコンビ、とかいっていたら、どうも二人ともおかしくなった。

24遠藤政隆

 右本格派右腕。日大明誠-熊谷組-中日

 先発中継ぎなんでもござれの怪腕。それでも私は先発完投方で、じっくり筋トレから、といっていたのだが、やはり便利使いがたたって、怪我をし、ついにはファンの信頼を失うにいたった。圧倒的な迫力のあるフォームから、ストレート中心にスライダー、シュートといった変化の小さいボールをコーナーに投げ分け、ウイニングショットはフォークという見事な本格派なのだが。いいところで怪我をするということで投げる神野の称号を与えよう。

 中日には少ない背筋力直下型のフォームで、あとは走りこみ投げ込み以前に上半身の筋力強化が先だと思う。筋肉が戻らないうちに投げ込んだらスピードは落ちる一方。栄養を取って十分に休むことから覚えたほうが良いと思う。

25小池秀郎

 悲劇の左腕。信州工-亜大-松下電器-近鉄。

 プロ野球界にもてあそばれた悲運の投手。信州工から亜細亜大学という比較的地味な球歴ながら、稀代の名サウスポーとしてドラフトでは7つの球団に指名されるという、輝かしい実績と実力を持っていたため、エリート扱いされる。そのなかで、多数の球団を逆指名しながら、この球団だけは絶対いや、といっていたチーム(中日含む)もはっきりしており、毅然とした態度で臨んだが、まさかの落選。「最悪」の一言をつい漏らしたがために世間の心象を大いに悪くしたまま松下電器へ行き、黄金時代を棒に振る。 そして近鉄逆指名後も、野茂などの好投手らと常に比較されたためローテ入りしながらも評価は悪く、野茂、吉井らが出て行ったあとも、奇跡的に活躍した山崎慎太郎などに煮え湯を飲まされ続ける。ついにエースとなった97年は、防御率が悪いなかで最多勝となってこれもほとんど評価されないで終わってしまった。そして高柳など死球の多いチームの中で常に危険人物とみられ、扱いもいいかげんで7回までノーヒットながら交代させられるなど、信じられない扱いをされ、ついにトレードで近鉄放出、しかも行きたくないといっていた地元球団中日に来ることになってしまった。つくづく運の無い投手だ。 中日では先発なのか中継ぎなのか良くわからない地位に落ち着きそうだが、どれだけ好投しても、きっとあまり報われないのではないだろうか。

 本格派とも技巧派ともつかないピッチングは天性のカンとしなやかなのに若干バランスの悪いフォームからくる伸びのあるボールが持ち味で、見た目以上にコントロールが良い訳でもなく、変化球がさほど切れるというわけでもない。打てそうで打てない直球に、適当な変化球で散らし、緩急でごまかす。そういった走者がいようがいまいが関係ないピッチングが打たれ強いピッチングを支える。

 ただ、いいときの小池はだれも打てない。しかも、理由がわからず、だれも打てない。それが持ち味なのだ。

26落合英二

 ガラスの右腕。作新学院-日大-中日。

 良いときと悪いときの差が大きい右本格派で、良いときのストレートは145キロで伸びてくる。全盛期は150キロ近いストレートを誇ったが、それでもやはり良いときと悪いときの差があった。現在ではストレートと、横の変化で相手を惑わすセットアッパーとなっているが、調子の良いときと悪いときの差があるのが、中継ぎとして相手を惑わしていると言えないことも無いのではないか。先発向きとも中継ぎ向きとも行かない投手で、やはりスタミナが無いのが致命的だ。怪我がちなのに中継ぎにいるのはその辺に起因しているのだろう。ただ、見かけによらず強いハートの持ち主で、その辺は中継ぎ向きだ。

 霊感投手として有名で、山崎などの打撃の調子を当ててみたりするらしく、「3が見えます」という不可解な言葉を残しては、それが的中して周りを気味悪がらせている。では、何故怪我をするのだろうか。

 腕にサファイアを埋め込んでいる(遊離軟骨安定のため)投手で、さすがに持病は治ったようだが、相変わらず怪我勝ちで体調の悪そうな顔が、中日投手陣の中では異彩を放っている。 

28大塔正明

 重量級右本格派。近大付ー近大−中日

 ダチョウ倶楽部のリーダーと小堺一機を足して2で割ったようなおとぼけフェイスながら、今時めずらしい真上から投げおろす150級の豪速球とkm/h切れ味鋭いフォークを持つドラゴンズきっての本格派。惜しむらくは制球に甘さがあり、変化球が高めに入ったところを痛打されるパターンで一軍に定着できない。今オフ遊離軟骨除去手術を受けたため出遅れたが、2000年度の守護神ギャラードがメジャー復帰の為今季限りとの噂もあり、従来の速球が戻れば来年がブレイクのチャンス。

 というコメントを江口剛司さん@ベースボールよもやま日記さんにいただきました。江口さんありがとうございます。

 付け足させていただくなら、前の出した投手のランナーがすっきりした瞬間や、先発したあとのすっきりした瞬間に打たれまくる、近大学出身らしくない癖がある模様。怪我、体重過多、コントロール不足、変化球キレ安定となると、答えは一つ。砂浜走り込みだ。

29前田幸長

 軽量級左軟投派。福岡第一-ロッテ−中日

 ロッテ時代までは七色の変化球を持つ速球派として意味のわからない地位にいた。ストレートは速く、コントロールも良く、変化球は多彩、マウンドさばきも勝気で、ウイニングショットにナックルを持っている、というどこからどう見ても打たれない特徴をもっているがなぜか打たれる、負ける、突然崩れる、といった不思議ちゃんとして二十代を送る。早い話が器用すぎてフォームが安定しておらず、気持ちも突然切れる上に、体力的にも不安定である、という安定しないことこの上ないのが原因であり、一試合中でも突然良くなったり、いきなり打たれたりして始末が悪い。中継ぎとして仕事した後に先発するなど、ざんざん便利使いされながら、いまも球速はさほどに落ちておらず、その上なぜか変化球投手となったりしてキャラが安定してない。とても九州男児とは思えない。

 高校時代はなんといっても甲子園優勝投手であり、今でもブルペンで投げ込まなくても速攻で肩ができる、そして人まねが大得意、といったところを見ると、どうやら投げ方とセンスだけで勝負しているタイプらしい。となると、生きる道は酒を飲んでマウンドに上がってしまうというあぶさんの道だが、前田の顔を見ていると、本当に手抜きしたほうがいいような気がしてならない。本人は真剣なんだろうけども。

30鶴田泰

 球界切っての弱々しさ。塩山商-駒大-中日

 コントロールと気持ちのピッチングが身上の右腕。新人時代から今までずっと売り文句が「落ち着いたマウンドさばき」であることからもわかるように相当芯の強い投手である。新人としていきなり規定投球回に達するほどの活躍をし、防御率も非常に良かったが、ヤクルト伊藤智の鮮烈なイメージに敗れて新人王を逃し、右肘をこわしていつしか忘れられた。毎年はじめには若手の注目株としてはや入団8年、ついに30代となるが、昨年はついに復活し涙の先発勝利投手となった。今年からは持ち前の落ち着いたマウンドさばきで中継ぎ先発のローテの谷間と大事なつなぎ役として活躍する様である。個人的にファン。

 ストレートの伸びが地味ながらも良く、他のボールを投げたときに相手が錯覚して打ち損じてしまう玄人好みの投手で、良いときは勝手に相手が焦りだすために始末が悪い。そのうち名前で抑えられるような投手になって欲しい。

31佐野重樹

 元祖吉本型野球アイドル。松山商-近大呉-近鉄-中日。

 四国地方出身選手ながら、芸風を変われて関西は近鉄に入団し?赤堀へつなぐリリーフとして頭角をあらわし野茂、吉井と仲が良かったことからテレビ進出。魅力的なアタマ、個性的な体型、年齢離れした顔、そして類稀なる芸人根性を島田慎介に見込まれてオフ芸人として活躍。セリーグ高津とともにパリーグ切ってのお笑い守護神として人気を集めたが、怪我をしてアタマとともに影まで薄くなってしまい、小池とともに地味な復活を飾り、そのまま中堅選手として終わりかけた。そこへ中日切ってのお笑い風貌系、あごの門倉がほしい吉本大阪近鉄とサムソンとソンの穴を埋めたい中日との思惑が一致、小池とともに不幸なトレードをするに至る。岩本、ギャオス、福留ら、キャラクターを持った選手の墓場として恐れられている中日に、またもや犠牲者が…。

 ボールのキレと相手に考えさせないテンポの良さ、そして怖いもの知らずの投球で、ポンポンと打者を切っていくのが魅力だが、はたして中日でそんなテンポを生かせるのかというと疑問符をつけざるをえない。となるとやはり全盛期並みの球威を戻したい。

 持ち前の輝く頭を生かしたピッカリ投法は余りにも有名。

32島崎毅

 元祖ホールド王。東京学館-国士大-NTT北海道-日本ハム−中日

 野球界の裏ロードを走りつづけた影の男。やはり日本ハムでもセットアッパーとして先発、押さえを支えた。東京学館、国士大、NTT北海道、ついでに日本ハムも含めてまさに「知る人ぞ知る」チームで野球をやりつづけているのが実にすごい。そしてセリーグ、中継ぎ投手人充実の中日で地味な活躍をしそうなところがまた島崎らしい。好きな歌がロードなのもそれっぽくて面白い。

 なんといってもホールド王となった日ハム時代につきる。サイドハンドから繰り出される抜群のストレートのキレと、相手を完全に裏切るシンカーがものすごく、島崎が攻略できるチームなどは想像ができなかった。それゆえに玄人好みだったが、下柳が入って以来は日ハムでも影の存在になったのがなんともいえず、中日でもいい働きをしながらも肝心なところで怪我をした。しかし佐野、鈴木平、島崎とパリーグ屈指のセットアッパーばかりこれだけ集まるのは何か深い意図でもあるのだろうか。

33小山伸一郎

 ドラゴンズ今世紀最後の豪腕。明野-中日。

 ここのところ立て続けに本格派の好投手を出している三重県の出身だが、小山は別格で高校時代から149キロと、ものすごい数字を出していた。平田など本格派の若手を立て続けにスクラップにしてきた中日にあっていまだに150キロ近いストレートを投げる素質抜群の存在。今年あたりから一軍でも通用するようになってきているので、あとは安定感がほしいところだ。

 本格派にしてはフォームが上体に頼っているということもなく、素直なフォームなので、あとは気持ちと体次第かもしれない。大きな怪我もないようで丈夫なので、体作りといわず、体を壊すつもりで徹底的に投げまくって欲しい。だいたい体作りをした投手がスピードアップしたことは見たことがないし…。

 野口に顔が似ていることは有名な話だが、ちょっと嫌そうなのが右腕が小山だ。フォームからすれば落ちるボールやスライダーではなく、カーブなど、チェンジアップ形を覚えると良いだろう。

34山本昌

 ミスター大リーグボール。日大藤沢-中日。

 左技巧派でコントロールと変化球のキレで勝負する。

 もともとはやはり大型投手で、本格派として期待されていたようだが、アメリカ留学でスクリューボールを覚えるとアメリカのマイナーでも昇格を薦められるほど活躍し、技巧派の道へ。秋に日本に帰国するといきなり先発としてローテ入りし7勝を稼いでいる。やがて本格派の今中が台頭すると今中とのサウスポーでのダブルエースの活躍は球史に残るものであり、中日の大黒柱として中日の成績を支えた。自己も最多勝、最優秀防御率など、投手の主立つタイトルをほぼすべて手中にするなどの活躍をしている。

 彼のウイニングショットはなんといってもスクリューボール。この左投手が投げるシンカーによりカウント稼ぎから奪三振、ダブルプレー取りに至るまで自由自在に投球の幅を広げた。留学時代に学んだボールであるから大リーグボールと呼んで差し支えないと思うが、中日ファンからはマウンテンボールとかヤマボーるとかいろんな呼び方をされている。

 一方で彼の生命線は、コントロールではなく実はストレートであり、これの切れがなくなるともともと荒れるほどコントロールが悪くないために適当にまとまって打たれてしまう。昔はストレートは襲いながらも勢いがあり、中四日でも投げれたが、そろそろそうも行かない模様。これは私の全くの私見だが、スリークォーターハンドへの転向に妙味があると思う。

41朝倉健太

 150キロルーキー。東邦−中日。

 前年に松坂、新垣といった怪物が投げたためになぜか騒がれなかったが、149キロという高校生離れしたボールを甲子園で投げた右腕。この朝倉投手、なぜかセンバツのほうが騒がれた上に、夏になると岡本(現阪神)の台頭のためエースナンバーを譲り、そのうえ福沢(現中日)擁する滝川二と初戦でぶつかって敗れた。この試合、雨で二日流れたこともあり、岡本ともども不運だったところもある。その後は西武などにドラフト一位指名が有力視されたが、いつのまにか評価を落とし、ハズレ一位で中日入団と相成った。不思議でしょうがない。

 マウンド上で躍り上がるようなフォームには安定感はないが、まだまだ未完成でこれからも球速が伸びる可能性は十二分に持っている。ただ、中日の場合なまじ投手コーチが優秀な上、体作りをさせる方針があるため、荒削りなところがなくなって凡々たる投手になる可能性も高い。最初の年から勝負のつもりでバシバシ投げて欲しい。怪我しないで有名になる投手なんてほとんどいないのだから。

42バンチ(メルビン・バンチ)

 右の新エース。ロイヤルズ-エキスポズ−マリナーズ−中日。

 2000年の中日の救世主で、150キロのストレートにキレのあるカーブが武器と言われて入団してきた。しかしながら世間の評価はさほどに高くもなく、ソン、サムソンの穴を埋めるには至らないといわれたが、オープン戦で投げるうち、カーブではなくスライダーが武器っぽいことが判明、その上ストレートのコントロールがやたら良く、テンポもいいこともわかり、なぜこんな投手が大リーグで活躍できなかったのか?と周囲を驚かせた。

 シーズンが始まると十分なスタミナも披露。序盤から終盤まで150キロ近いストレートにキレのある変化球で三振と凡打の山を築き上げ、ついにはノーヒットノーランまでやってのけた。体も過不足なく、フォームも日本の投手に近いことから、エディー・ギャラードともども、見つけてきた高橋コーチの眼力がすごいのだろう。

 牛肉が大好物で、奇妙な日本語を覚えては話す。個人的に彼が中村を指して呼ぶ「ターケチャーン」というセリフのファン。つかみ所がないようだが明るい人である。

43小笠原孝

 元明治大左エース。市立船橋-明治大-中日。

 明治大学左エースとして活躍した投手で、一年先輩に川上、後輩に木塚(現横浜)がいる。大学時代などは川上は比較的に慶大の高橋(現巨人)に弱かったが、小笠原は完璧に押さえ込むなど左には強いし強心臓なところがある。しかし川上ともども結構自信家らしい。癖のあるフォームから怖いもの知らずのストレートで勝負する本格派だが、さほどに球が速いわけでもない。何でも速くもフォーム改造するなど悩んでいるらしいが、左投手の多い中日だからあまり使われないが他チームなら十分ワンポイントとして通用するのではないだろうか。

 どうにも即戦力という風に言われながらあまり使ってもらえなかったことへの憤りが自分に対して跳ね返ってしまっているような印象を受けるが、そこのところは市立船橋出身の根性と明大閥があればきっと何とかなると思う(なんじゃそら)。落ちるボールよりはムービングするボールなど癖ダマを覚えて勝負することに妙味があるように思う。フォームとしては若干見やすいかもしれないので。

45鈴木平 

 ギョロ目セットアッパー。東海大一-ヤクルト-オリックス−中日。

 なんだか知らないけどセットアッパーとしてものすごい使われ方をしているうちに本格派とも技巧派とも曲者ともつかない絵に書いたようなセットアッパーになった、という投手。実のところはスリークォーターからのスライダー投手だ。ヤクルトでも中堅投手として適当に頑張っていたのが、オリックスの以来を受けて移籍、平井につなぐセットアッパー、そしてリリーフエースまでのし上がった。散々酷使されながらも頑張っていたため、球速が上がったり下がったり落ち着かず、最終的にリリーフから中継ぎまでやる便利屋、そしておかしくなってセリーグ復帰し、中日でまた酷使されそうな予感だ。どう見てもスタミナのあるタイプでもなく、大事なところでテンポ良くストレートスライダーを投げてほしいものだ。まあそのあたりは山田投手コーチが心得ていることだろう。

 目とほほがチャームポイントで、なんともいえない風貌をしている。島崎と並んでセットアッパーとしての走りで、この手の投手に多いスリークォータハンドの投手。こういったタイプは目が慣れると打たれる、ということが多いので、実際通用して一回りだろう。となるとこれ以上投手として何が必要になるのか、といえば何も必要なく、あとは打者に対する研究と、体を軟らかくする努力。

46カールソン(ダン・カールソン)

 ディンゴの相棒。MLBジャイアンツ-デビルレイズ-ダイヤモンドバックス−中日

 可もなく不可もないという感じの典型投手で、ストレートは140キロ、変化球はスライダー、友達がディンゴ、と以下にもよさそうながら、突出したものが何もないため、キャンプまでは良いがシーズンからは評判を落としやすそうな投手。案の定二軍のローテスタッフに。若手育成のプランニング、試合作りには役立っているっぽい。特徴的にはさることながら経歴的にもデビルレイズ、ダイヤモンドバックスと新球団を転々とし、いずれオリンピックへ、とやってきたディンゴの視察ついでにテストを受けて合格してしまうという、いかにもな経歴がなんとも泣かせる。

 でも見たことがないのでこれ以上コメントの仕様がない。

47野口茂樹

 99年MVP左腕。丹原-中日

 低めへ伸びのあるストレート、捉えどころのないスライダー、カウントの取れるカーブ、打ち取られた打者が何で打ち取られたかわからないようなフォークと、イマイチ凄みのない球種を集めた投手。もちろん、スライダーが一番打ち取る確率が高いボールだが、それまでのストレート、カーブのコンビネーションがなんともすばらしい。フォークも投げるらしいがほとんど判別不可能で、たまにスプリットに近いボールを投げるのが効果的。

 いいのか悪いのかわからないのが特徴で、いきなりフォアボールを出したり、突然ノーヒットノーランをやってのけたり、急に高めが浮き出したり、とおかしな投手で、アメリカ留学に行く前から得意球がカーブ。それなのに学んできたボールは、と聞かれて「カーブ」と答える、なんだかわからない投手だが、現在彼のウイニングショットはスライダーである。高校時代から、ドクターKとよばれ、努力家で知られるが、突然ナックルを投げ出したりしてわけがわからなかったらしく、今ではすっかり三振を取りにいかない技巧派になってしまった。。まして、怒っても答えないなど、宇宙人そのものだ。毎年毎年今年の野口は大丈夫かと心配させられる。

 毎回勝ったあとに「中村さんのおかげです」というのは知られているが、実は一番相性のいい捕手は阪神に移籍した矢野である。

51福沢卓宏

 近代型スライダー投手。滝川第二-中日。

 高校時代、帽子のひさしに「目指せ150キロ」の文字を入れていたのでもわかる負けず嫌いな投手だが、ウイニングショットは前からスライダーといってはばからない、現代型の本格派投手。この手のタイプの投手には他に岩瀬、伊藤智仁、ソンドンヨル、松坂大輔、東海大相模築川、立教大多田野らがいる。スライダー投手というのは基本的にはコントロール勝負だが、高速スライダーを投げる投手は逆にストレートが命で、良い捕手に恵まれることなどが大成の条件となる。また一発を食らうことが多いのも特徴だ。 ストレートは140キロ代を常時たたき出し、スライダーも130キロ台の高速で変化するこの投手は、高校時代からほとんど大崩れすることなく、体調が悪くても抑えるだけの力を持っていた。金属バットではないプロでは高速スライダーのほか、スローカーブなど他の球をいかにうまく使えるか、それとも球速をこれ以上アップできるか、が鍵だろう。

 高校3年センバツ出場し明徳義塾に惜敗、夏の甲子園では現阪神の岡本、ドラフト一位の朝倉と投げ合って投げ勝ち、長崎日大などの強豪を苦しみながらも撃破してベストエイト。優勝した岡山理代附属に準々決勝で敗れている。中日の二軍で、うまく体のバランスを保つ事が出来る投手に育つかどうかというと疑問だが、ちょうど良く入団した池内投手コーチにフォームバランスを教えてもらえば、朝倉より体制の確立は高いといえる。

52 ギャラード(エディ・ギャラード)

 ドラゴンズ新守護神。

 ストレートは150キロを超え、そこにカットファストボールなどのボールを投げ込むこれまた近代型の投手。恵まれた上背から、痛烈なストレートと高速で変化する変化球を投げ込む。外国人投手にありがちな手投げの投手でもなく、どちらかというとひょろりとした体型から、全身を使って投げ込むのはまさしく日本向きで、このあたり、さすが高橋投手コーチだ。コントロールなどにも問題はなく、バンチともどもなんでこの投手がメジャーで活躍できなかったのかが不思議なところだ。

 本格派でありながらスリムな体型は現代型で、かつリリーフの資質を十分に持っている。投球フォームからもおおよそ日本での練習方法がマッチしそうな感じで、救世主というより、ますます成長して不動の守護神になりうる可能性さえあるのではないか。

53佐藤康幸

 幻の左ワンポイント。池新田高-帝京大-河合楽器-中日

 スローカーブと伸びのあるストレートのコントラストが武器の左腕。2年前ワンポイントとしてそれなりに活躍したが、昨年左ばかり補強した中日にあって怪我をし、完全に忘れられた感がある。個人的には長いイニングも見てみたいが、二軍ですらショートリリーフとしてしか使ってもらえないようだ。 スピードボールがあるわけでもなく、華麗なウイニングショットがあるわけでもなく、先発として安定感があるわけでもないので、一軍に上がるためには、とにかく0点に抑えるしかないという厳しい状況。今年成績を上げられないと、年齢的にも危なく、勝負の年だ。あと一つ、ウイニングショットと呼べるボールが欲しい。

59山北茂利

 大器晩成レフティー。中京商-トヨタ自動車-中日

 左本格派でスライダーを持ちダマに持ち、つい最近大成した、というとまるで岩瀬のようだが、若干様子が違うことの投手は、高校時代から全く無名であり、トヨタ自動車でも二年目まで登板なし、また最近出てきたといってもスピードがあるというだけで対して実績も残していない、という無名づくしの投手。今年もおそらくは中日が取らなかったらどこにもドラフトでかからなかったのではないだろうか。

 191センチの長身から、叩き込むようにしてストレートを投げ込む投手で、これから体作りをしても十分に間に合いそうな大器晩成型。下手すると常時150キロを越える左腕になりかねないのでじっくり育てたいところだ。肩が使いべりしていないのも魅力だが、どうも野球カンに乏しいようなので、打撃練習などを頻繁に行うといいと思う。

61矢口哲郎

 金の卵。大宮東-中日

 数字以上に見えるストレートと、勝気ながら耐えられることが出来る精神力を若くして備えている投手で、二年目とは思えない安定感を誇る。シンカー、あるいはスライダーといったボールを覚えれば、とてつもない投手になるかもしれない逸材。中日のスカウト、さすがである。なんといっても肩、ひじ、腰、ひざといったところのフォームバランスは絶妙で、筋力アップすれば本格派としても十二分に通用するし、また実践向きのボールの切れは技巧派としての可能性を持つ。個人的に大ファン。

 若いうちから一つ変化球を覚えると、ボールが生きなくなるといわれるが、ストレートを生かすボールをぜひとも覚えたい。川上二世といわれているが、本格派としても技巧派としても通用していけるであろう彼は、二軍でくすぶりつづけている今中が左右逆ながらほぼ同タイプ。あのスローカーブを盗んで欲しい。スローカーブを投げれば投げたで川上二世だけど(笑)。ちなみに中日の川上二世は矢口、川添、朝倉と三人もいる。

62宮越徹

 若くして幽玄。郡山-中日

 矢口と同じように伸びるストレートを持つが、こちらはコントロールという武器がすばらしい技巧派の金の卵。中日の方針なのか、本格派の金の卵は小山など腐るほどいるが、その中から技巧派としてすでに将来を渇望されているあたり、よほどの才能があるらしい。コントロール重視の投手ということで、ストレートの威力はさほどでもないが、二軍戦でなんだか知らないうちに抑えてしまうあたりがその真骨頂。後は緩急の一つも覚えれば即一軍でも通用するだろう。

 ただ、技巧派というのは比較的筋肉疲労がたまりにくく、投げすぎてしまう傾向があり、この投手も疲れがないからといって投げ込みすぎてしまうようなところがあるらしい。投げ込みは大切だが、走りこみ、プールトレなど、体に無理を与えないバランストレもしっかり行って欲しい。ただし、筋肉はあまり付けないほうがいいかもしれない。

64白坂勝史

 イバラを左腕で払う男。横浜高-関東学院大-中日

 一年目から最多勝を狙うといっていたビックマウス左腕だが、ほとんどチャンスを与えられることなく一年目を終了し、二年目には台湾留学、三年目、やっと帰ってきたが相変わらずの制球難が直らないで当番機会があまりない。もともとが実践向きの投手で、ショートリリーフなどやるような投手ではない。四球なんかどうでもいいからとにかく強気に押しまくるタイプだが、やはり捕手に恵まれなければ制球難の投手にリズムは現れづらい。早くも勝負の年だ。 となると、今年欲しいのはテンポ。制球難の投手ゆえ、テンポなどは望めないというのが一般論だが、適当に荒れるタマが考える暇無く飛んできたら打者はたまらない。ただ、中日にそういうタイプの捕手がいないのがなんとも残念だ。 

 左の本格派でMAXは148キロ、大学時代は関東学院大でドクターKとして活躍している。ボールの勢いは十分プロで通用するので、その恐ろしい目つきで打者をビビらせて投げて欲しい。もうちょっと体重があったらサムソンリーぐらいの活躍が期待できるのだが。

68川添将大

 近藤スカウトの秘蔵っ子。享栄-中日

 いかにも享栄高校出身らしい打撃もこなせるような小器用な右本格派で、中日に比較的多いタイプ。体作りから入るためにだいたい実践カンを失ってスピードが落ちていくのが中日の投手のパターンだが、川添は一体どうなのか。 享栄出身の近藤スカウトが目をつけ、そのまま中日入りしたというパターンで、変な変化球修得と、フォーム変更を繰り返すようだと末期症状。「投手の三輪」になる可能性もある。そうならないためには、優秀なコーチ陣に自分から教えてもらいにいけるようにすることだろう。

 実践向きなのかどうなのか、というのはあまり見たことが無いので良くわからない。

69呂建剛

 中華の誇る秘密兵器。 

 韓国、台湾とどうも亜細亜なら何でもいいという感じで外国人補強を続ける中日が目をつけた中国の天才投手。2年目だが、練習生として活躍していた時期もあった。ストレートはなんとMAX150キロだが、あまり伸びが無いらしい。もともと身体能力が高い選手なので、低空遠投などの練習で、バランスアップを図りたい。持ち前の身体能力の高さが示すとおり、将来性は抜群で、すでに十分なボールを投げているのに、実戦で活躍できないのは精神的なものもあるだろう。 台湾と中国ということでどうなのかわからないが、今年は曹投手も入団したので、切磋琢磨してほしいものだ。

 

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