再来!天橋立 

日時      1997年9月27日

到達場所   福井県小浜市 天橋立(京都府北部)

メンツ     僕 ヒロ コバシン

到達手段   ヒロのRAV4 コバシンのミラージュ

 

 僕がバイトを始めるちょっと前。やっとこヒロの車がRAV4になった当時、小浜に来やがれとのお達しがコバシンから。

まだ二十歳になったばかりで思い付きで動く僕らは、まともに連絡もせず、小浜を急襲する計画を立てた。いい迷惑はコバシンである。その日はバイトもあるというのに、いきなり夜中に来られたのではたまったものではない。が、そんなものは僕とヒロのコンビには通用しない。来いと言われた以上行くのが男ってなもんだ、と妙な理論でコバシンの家を目指す。

一方的に電話して我らがRAV4。なんとなく国道8号敦賀武生間へ。

 ヒロがミニカだった当時、6月2日に、小浜に行ったときは散々だった。僕が急カーブの看板を読み、ヒロがハンドルを両手で持って応える。僕の方は、運転してないからどうする事も出来ないで、とりあえず看板読み。思い付きで走行計画も練らず旅行に行くのは良くないと言う事を表す典型的な例となった。しかし、三ヶ月も経つと、いいかげんに僕らも慣れてくる。敦賀には何回行ったかわからないぐらい行っている。この日、ヒロは油断しまくりで、岸本さん流オーバードライブオフ走行をやっていたところ、そのままオーバードライブをオフにした状態で走りつづけてしまい、燃費を大量に落とした。

「あー、どうも燃費悪いと思った。」

とヒロ。そのままにしておくほうもしておくほうだが、気がつかないでいる僕も僕だ。さすがに、このあたり運転履歴はまだまだ少ないということらしい。

 敦賀、いつものローソン。敦賀、武生間の8号線は、敦賀に入ってから二つのローソンがあるが、この当時はまだ一つしかない。そこで僕らは差し入れと、どら焼きを買う。どら焼き、うまそう。

「温めますか」

とメガネの店員さん。ヒロと僕は、顔を見合わせる。

「どらやきってあっためるもんなんか?」

「あっためんでも食えるけど、あっためた方がおいしいダロウ。」

ヒロの論理が分からない。どら焼きを暖めるというのはちょっとしたカルチャーショックだ。

「あっためた方がうまいっすかね?」

「どう思います?」

と店員さんに詰め寄るわれら。

「さー、温めたこと無いですし…」

と笑いながら店員さん。ねえちゃん、温めたこと無いのに温めること人に勧めるなや

「んなムチャクチャな…。」

「んなら、おまえも買え。チャレンジするべし!」

とヒロが言うので、二人そろってどら焼きを買う。

「うまいわ。(パクリ)あつっ、餡、あつっ!!」

「ホンマや!意外にうまいけどもあつっ!マジあつっ!うまいとかや無いわ、熱いわ。」

 熱い。水分を含んでいるどら焼きの餡は、マイクロウェーブに当たれば、餡だけ熱くなる、と言うのは、考えてみれば当然の話だが、それにしても舌をやけどするほど熱いとは思いもよらず。口直しにもう一個、どら焼き。

「あの姉ちゃんに報告してこいや。それが攻めやろ。」

とヒロ。それは攻めじゃなくて責めというものではあるまいか。ともかくも、どら焼きもう一つ。店内で、ほっとコーヒーと、どら焼きを買う。店員さん、嫌そうに笑いながらレジ。こっちもなんか、拷問に近い。

「温めます?」

と店員さん。

「熱いんでいいです。すんげえ熱いんで。」

というと、店員さん、大笑いした。こっちもつられて笑ってしまうが、店長さんらしき人が愛想笑いを浮かべながらこっちを睨む視線が痛い

 車に戻る。若干焦燥気味の僕、

「大笑いされたよ。」

ヒロはあれだけけしかけておきながら、冷静に

「どら焼き温めるかどうかで、店員さんに聞くのって、いじめやな、いじめ。」

とふりかえる。わかっているならなんでやらせるだよ

 

 一休みすると、車は小浜へ向かう。

ヒロあたりは、閑散時感応式の信号を見てすごく嬉しそうだ。

「ほら、いずみ!みろ!閑散時感応式」

「おぁ?」

「ほれ!閑散時感応式」

「うん。」

「何やろうな、閑散時感応式」

「そりゃあ、閑散時に感応式になるんだろうよ。」

「何やお前、感動せんのか?閑散時感応式やぞ!

ヒロ、しつこい。こんな事に情熱を燃やせる彼は、若い。たかが閑散時感応式じゃないか。その後、

「あの信号は閑散時に感応式やけど、多分ほとんど閑散時やからずーっと感応式だろうな。」

とその後10分近くそれについて語るヒロ。どうでもいいだろ、そんな事。これ以上ないくらいくだらない会話を続けながら車は快走、小浜市に着く。で、大体これもいつものことだが、川の近くで道に迷って、ホットスパを見つけてなんとなく思い出してコバシン邸。

 ピーンポーン…コンコン。

「誰?」

「俺」

バタン。開けろよっていうか、閉めんなよ。いくら関西人だからってネタがベタすぎるぞ。

ガチャ。鍵までかけやがった。僕とヒロ、顔を見合わす。

「帰るか。」

「帰るべ。せっかくやから京都行くか?」

と、その時やっと開いて

「帰んなよ!」

とコバシン。どうでもいいけど何でお前が怒ってんだよ。で、まあやっと部屋の中に入れるのだが、このやり取り、毎回毎回コバシンの家に行くと必ずこうなる(旅日記鳥取編参照)。いいかげんに学習してくれ。

 入った瞬間、コバシンが何かを蹴飛ばした。

「ギャー」

と言う大変な悲鳴が聞こえる。するとコバシンは猫をとっつかまえてベットの向こうに投げ捨てた。

「うぎゃー!!!!。」

やる気のなさそうな猫は、部屋の向こうで脅えている。

「何や、コバシン、同棲か?」

とヒロ。全くなんにも知らなかったが、どうやらコバシンしばらく前から猫と同棲しているらしい。「バイト先でもらった」とのこと。まあ、猫も可愛そうなものである。ニャーと泣いた瞬間に猫を捕まえ、放り出す。そのたびに猫はギャーと悲鳴を上げ、脅えだすのだが、30秒後にはこりずに近寄っていき、またコバシンに投げられたりとかしている。全くもって学習能力のない猫だが、これだけ懲りずに投げられているということは、案外可愛がられているのか、猫自体がマゾなのか、あるいは人生ごと諦めているのだろう。毛が細長く、いかにもネコ臭い、ペルシャネコである。目がでかく、やる気が無いくせに、面倒見がいいというか、人付き合いが良いというか、そういうところがいかにもコバシン的で、早い話が幸薄いだけのネコなのだが。

 数分後にコバシンが電話を受けて出かけたので、僕とヒロは多少猫とすごす時間が合ったが、この猫、ねっころがったヒロの上に乗っかってヒロをじっと眺めていた。どうやらいつもはコバシンの腹の上でスリーパーをかけられていたらしい。ヒロ、猫と目が合ったが、

「おおえあおおお」

と素っ頓狂な声を出している。猫を僕に渡したので、挨拶代わりに僕も猫に足ばらいを掛け、そのままベットの上にほおり投げた。

「ギャー」

と叫ぶ猫は例によってベットの向こう側に逃げ、脅えてこっちを見ていたので、僕らはとりあえずしりとりでもしてくつろいだ。するとまたすぐ出てくる。全くもって学習能力がない。コバシンが帰ってきたので、僕らは近くのコンビニにおつまみとお弁当を買いに行き、その後ヒロが持ってきた、一本義物語、という大吟醸もいいところってなお酒をちびちびやりながら、とりあえず猫について語る僕ら。

「ネコの名前付けようや。」

とヒロ。私はゴンザエモンと読んでみたが、ヒロはチーズかまぼこを食べさせながら、「チーカマ」と呼んでいる。後日わかったがこのネコの名前、「ぺる」だったらしい。まんま過ぎる。せめてべるしいとかひねって欲しいものだ。ネコの相手をしていても疲れるらしく、コバシンたちは酒を飲むとそのままネコをダンボール箱の中にぶち込んでその箱ごと蹴っ飛ばすなどの暴行を繰り返すと、

「3時まで。」

と寝てしまった。3時まで、寝れない私は鉄拳チンミを読みながら待つ。

3時。おこすと、

「4時まで。」

4時まで、私は酒でビタミンが足りなくなった体を引きずって散歩して待つ。4時。4時になるとさすがに起きてきた。コバシンを鼓舞してミラージュに乗り込み、成り行きで天橋立に向かう僕ら。若い。

 

 

コバシンのやる気のある運転で、布袋さんを聴きながら車はあっという間に宮津。そこからだが、前に遅い車があるためスピード狂(当時)のコバシンはジュースを買って一休み。してもう一度飛ばすとまた同じ車に捕まる。繰り返し。やはりこの地方、あまりやる気が無い。そうである以上、僕らもやる気無しでやるべきではなかろうか(なんじゃそら)。要はスピードを出さん方がエエ、ということですが。

 

ともかくも、あっという間に天橋立到着。初心者(当時)岸本さんといった時と比べて、これでもかというほどドラマが無い。僕らはまだ若干暗い天橋立を歩いていく。歩いているうちに夜が明けてきた。天橋立、入り口近くには目が不自由そうなネコとかがいる。

パシ、パシ、と濡れた砂を歩きながらどこまでも僕らは行く。

「ふざけんなよ!歩いてんじゃねえよ。」

「どこまで行くんだよ!馬鹿!」

「行けるとこまでに決まってんだろ!」

とわけの分からない喧嘩をしながら歩く僕とコバシン。ヒロ一人だけ、めちゃめちゃ素。

「なら帰ろうや」

といつもは一番まともじゃないくせにそう言う。

「ノリ悪ィんだよ、手前はよォ!」

「そうだよ!いっぺん死んでこいっつってんだよ!」

と僕ら、ヒロ、冷たく、

「帰ってエエか?。」

と一言。ノリが悪い。トイレがピンポン鳴っているのを見て、

「うるせえよ!鳴ってんじゃねえよ!」

手前、人間じゃねえだろ!ふざけんなよ!」

とテンションの高い僕らだが、途中すれちがう人がいると、非常にわざとらしい丁寧な言葉づかいになる。

「今日はさわやかな朝ダネ。」

「そうだネ。」

「ああ、気持ちが良いなア。」

「うーん、来て良かったヨ。アハハ」

お前らいい加減にしたらどうだ?

冷静なのは、一人だけ、ヒロ。

「なんのことダイ?」

「そうそう、僕らいつもさわやかじゃないか!」

「あかん、ついてけんわ。」

ついに見捨てられた。そういう高いテンションでポテポテ歩くと、なんと、天橋立、踏破。

「おい、ついてんじゃねえよ!」

「日本三景もこの程度か、コラァ!」

と僕らはテンション高い。が、腹が減った所に映る映像、「よしのや」。

こんなところに吉野屋が…。しかも明らかに牛丼屋ではなく、つぶれているんじゃないかとも思う。朝だからわからなかったが。

「奥が深いな、天橋立。」

とヒロ。どういう意味だろうか。

帰りは天橋立をまた、ハイテンションで引き返す。途中、アームストロング砲の展示を発見。

「これでイエティ撃ち殺してえよな。」

と良く分からないトーク。徹夜明けならではだ。どうでもいいが、これ以上うちわ受けな旅も珍しい。非常に遠い所で、天橋立を踏破し、日本三景を目の当たりにしたのにもかかわらず、印象が無くて、しかもうちわ受けな旅。意味が無いことこの上ない。そして、何をするということもなく、帰宅。朝食は、マクドナルドの朝マック。当時流行っていた「LALALA Love song」とか流れて、いい加減なツッコミを入れるなど、どうしようもないくらい、くだらないたびになってしまった。まあ、いつものことだが。

 

 例によって帰りに何も無いのが疲れの証拠。どうも、生産的じゃなく、普通の大学生活だなあ、とか変な実感してみたりとか。そのまま福井県に戻ると、岸本さんちでMROテレビ、サッカー日韓戦を視聴。負けるし。

 

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