1  僕と鉄道

 僕は電車が好きである。兄が好きだったから、その影響をもろに受けた。兄は鉄道好きで(今はそうでもないが)電車の本が家にあって、色々と兄に電車のことを教えてもらった。そうして僕は今は亡き日本の鉄道線の間にすんでいる。先ごろ廃線になった名鉄美濃町線の新関−美濃間と、今は長良川鉄道と言うレールバスに姿を変えた越美南線の間。名鉄神光寺駅のすぐ近くに住んでいた。そういうわけで、電車は日常生活の一部である。路面電車の名鉄美濃町線と、ディーゼル線の越美南線。鉄道マニアが聞けば泣いて喜びそうなところ。そういう所で日常を過ごした。

 美濃町線の新関−美濃間というのは、この上なく遅い。何せ自転車で抜ける。国鉄の越美南線は美濃太田−北濃という短い間をのんびり走り、こちらもさほどに速くない。そういうわけで僕は速い電車に憧れを持った。身近に速い電車と言えば、名鉄電車が新岐阜‐豊橋を結ぶ特急、パノラマカーであった。名古屋、岐阜の人たちからしてみれば、それに乗るのが当たり前だったのかもしれないが、僕からしてみると、名鉄特急でさえすごい速さの電車である。

 名鉄線はその独特のパノラマカーと言うものを持っていて、一番前車両では、目の前にガラスがあって、その前に景色が広がるパノラマ席と言うものがある。名鉄パノラマカーの一番前のパノラマ席に乗るのは、いつしか僕の夢になっていて、南知多ビーチランドに遊びに行った時に、帰りの特急でうしろがわ車両のパノラマ席に乗り、酔ってしまったことがある。

 そういうわけで今でも速い電車が好きだ。今ではパノラマスーパーという新型車両が特急を勤める名鉄線。そのパノラマスーパーの二階パノラマ席に座ったりすると、今でも胸おどる。中学時代には全国の特急に思いをはせ、特にスーパービュー踊り子、ワイドビューひだなどの特急には、友達に熱く語るほどになっていた。特急北アルプス、近鉄アーバンライナーなど、写真にとって悦に入っていた時期もある。おそらく、大学に鉄道研究会があれば、僕は今なだたる鉄道マニアになっていただろう。新幹線に至ってはもう、語り尽くせない憧れがある。今でも新幹線は大好きだ。新幹線の中で弁当を食うなんてのは最近は一年に一度ぐらい機会があるが、あれはもう最高で、おそらくその時の僕の顔は、天下を取ったような満足な笑顔であろう。のぞみには一度だけ乗った事があるが、あんな速いものはないと思った。飛行機よりも速いと今でも思っている。

 そこへ行くと、名鉄美濃町線は余りにも遅い。路面電車のため、専用線内以外は40キロしか出さない。とにかく遅い。小さい頃から駅に着くまでにスピードを落とす電車と競争するのが日常であったほどに遅い。自転車で抜けるほどに。だから、はっきり言ってどうでもよく、ただの日常の風景だった。僕はひたすら速い電車が好きだった。

 

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