一泊二日新潟のたび

日時    1997年9月12日〜14日

到達場所  新潟県新潟市

メンツ   僕 ヒロ 岸本さん 上馬君

到達手段  ヒロのRAV4   岸本さんのカローラ

 

 自動車を使って、夜出発。その日のうちに新潟について、田中角栄が作った町というものを見学、そして酒蔵に行って、そしてそして…とたくさんの希望を載せて出発をしようと計画、当初は二泊三日の旅行を予定、二日目車中泊の予定だったが、岸本さんがまたプランニングブレイカーぶりを発揮。一泊二日の強行軍という恐ろしい旅行となったこの新潟旅行。結局旅行も、道中だけで他何も無いという、ただのドライブになってしまった。

 まず新潟に行こうと言い出したのが僕で、7月頃に「田中角栄見学ツアー」を企画。9月にお酒を飲んで決定。そして9月12日深夜から、9月13日の早朝にかけて出発して新潟につき、観光して一泊、観光して車中泊、15日に帰る、という計画で決定、そのように用意した僕、ヒロ、上馬君だったが、どこで間違ったか岸本さんには、一泊二日、と認識されていた。そして何と岸本さんは9月14日の夕方にバイトを入れるというとんでもないスケジュールを組んでいた。なんておそろしい人。

 

 

 9月12日未明。車を持っていない僕の家に岸本さんがお迎えにきて、その後集合・出発場所の福井県立大学へ。そのあと荷物等の確認と、秘密兵器の通信用トランシーバの使い方、電池の確認等を行う。車はヒロと上馬君のJOYランドバイト組(当時。ジョイランドはカラオケとゲームセンターのお店)、僕と岸本さんの天橋立遠征組に別れ、福井県立大学で出発前に確認事項を調査。僕は9月6日にキャンプに行ってからは、生活時間帯を徐々にずらして9月12日夕方に目覚めたほぼ完全な旅行シフト。上馬君も旅行シフト。ヒロはバイトの関係から9月12日の朝遅くまで寝てからバイトに出て、その足で旅行に出かける徹夜シフト。対して岸本さん、前の日に彦根にいて、9月12日当日に帰還。前の日の夜は琵琶湖一周していてすでに徹夜していると言う、ふざけんじゃねえ、といった感じのシフト。出発前から既に先が思いやられることとなる。痛く不安だったが、かなり岸本さんは元気そうだったのでまあ安心(無理矢理)して車に乗り、

眠くなるからなるべくたくさん話してな。

という、とてつもなく恐ろしい岸本さんの注文どうり、良くしゃべりながら、金沢方面へスタート。トランシーバーが威力を発揮し、2、3のコンビニで程よい休憩を入れながら、先発JOYランド組で順調に金沢へ。金沢を順調にパスして富山へ。至極順調。僕も柄にもなく良くしゃべり、チェッカーズの歌を歌い、更に先発組とラブホテルを使って場所の確認。ナビ役の僕が大活躍です、ええ。

 8号線をしばらく行くと金沢と富山の県境を越え、富山県の小矢部市、そこにあるどちらが本線か分からない交差点に出る。富山慣れしていない僕らはどっちが8号線か分からず、仕方なく角を曲がってローソンへ入った。

 そのローソン、なんとも個性的なお店である。なんつったって音楽が流れてない。ローソンCSホットステーションが流れていない希有なローソンで、その上掃除中ということもあり、スペースが狭い。おかげですごくさみしげな店に感じる、そのローソンでトイレを借り、ガム、コーヒーなどを買い込んで、位置関係を確認。その間、岸本さんも軽く食糧とコーヒーを買う。なんでも「コーヒー買わんといつ寝るかわからへん。」嘘でも起きているといって!とか言いたくなってしまうが、それを言っても目が冴えるわけではないので、言わない。駐車場ではヒロが岸本さんのタイヤを指差す。

「ほれ泉!溝ないやろ?」

 わざわざこれ以上不安になるようなことを言ってくれるな。見てみると、確かにタイヤの溝が無い。溝どころか空気も減っている。どないやねん。もう、好きにしてくれ、と半分あきらめ顔でおにぎりを食い、車に乗る。再出発。

 富山方面に向かうこの国道8号線だが、相変わらずラブホテルが多い。それに夜走るとトラックだらけである。トラックだらけってことは無線がトランシーバに入ることはないだろうか、と思っていたが、そういう心配は無用であった。暗いながらも道幅が大きく走りやすいこの道を北東から北へ進んでいく。夜だからあまりわからないが、国道156号線終点の街であり、行ったことはないが、馴染み深い名前であった富山県高岡市にいる、という事実は若干僕を興奮させた。ここの辺りでナビゲータ係である僕と上馬くんがトランシーバで情報を交換し合う。どうやら道は8号の富山高岡バイパスに乗ったらしい(この辺は確かではない)ほどなく富山市へ。地図で見るとそうだが、富山と高岡の間は直線にするとさほどの距離も無く、すぐついた感じがした。車は富山の市街は通らず、8号線をひた走る。しばらくすると車は滑川市に入る。速い。高速道路とさほど変わらないスピードで飛ばせ、道もよい為に全くの快走。神通川など、地図でしか知らなかった川を越え、初めて見るネオンを潜りぬけ、車はひたすら快走。ストレスがたまらないため、休憩も無しでノンストップで魚津まで来た。上馬くんから連絡が入る。

「このへんで高速道路にはいろうか。」

 魚津を超えると、その名も高き親不知子不知など、初心者には辛い道が続くらしい。よく分からないが、そういうことなら仕方ない、と高速道路に乗った。結果的には朝日か、黒部のインターチェンジで乗るのが一番賢かったらしいのだが、そんなことは知らないから仕方が無い。

 

 

 

 

 北陸道は結構怖い。真ん中にポールが立っているが、それでも早いのだ。見れば隣でトンネルを掘り進んでいるが、これが全面二車線になるのは相当後の事だろう。長いトンネルをいくつかくぐって、休憩を入れる事になった。上馬君が持ってきたトランシーバーの感度はすこぶるよい。特にトンネルの中では電波が跳ね返るのか、相当によく聞こえる。連絡を取り合い、速度をあわせながらも、車は一気に進んで名立谷山サービスエリアに止まった。サービスエリアは人も少なく、当然店もやってない。岸本さんは目もうつろ、バイトで疲れたヒロもうつろ。仕方がないから僕だけおきて他の人たちは寝る事になった。こんな事なら僕もコンディションをあわせるんじゃなかった、と思っているがそれは言わない。

 さて、自動販売機でから揚げを買い、芝生の上で前周り受け身など取っていたら、明るくなってきて、人も見始めたのでやめた。仕方なく、持ってきた見えるラジオのバンドをあわせて、ラジオを聞きながら、海を見ていた。そのうちやるせなくなってきて、そのうえ潮風まで目に入ってきて、涙が出てきた。が、あくびの後なので当たり前である。歩いていくと、地面にブラジルまで何キロとか方角と一緒に書いてあるので、あっちがアルゼンチン、こっちが北極、こっちはニューヨークとか指差しながらしゃべっていたら、こんな時間に起きている子供がいて、不思議そうに見てきたのでやめた

またラジオをおとなしく聞く。しばらくするうち、やくみつるが出てきてなんか言い始めた。ベイスターズファンをやめたのどうの、といっている。なかなか面白かったのでにやにやしながら聞いていたが、何で新潟まで来てやくみつるなんだと思うと、屈辱のあまり涙が。うそだけど。時間になって起こしにいく。「時間ですよ」と僕が呼ぶと、「あと1時間」の声。仕方ないからまたコーヒー。見えるラジオの番組など聞いていても一向に面白くならないので、仕方がないので人が見ていても芝生の上で前回り受け身をする。ちょっとだけ強くなった気がした。いや、精神的に。さっきまで少しだけ雨が降っていたが、何といっても残暑の季節だから、芝生は水をさっさと吸い込み、芝生の冷たさはさほどではない。服の汚れもそこそこにひたすら前回り受け身を取っていたら、じいさんに、

「なんかのスポーツかね」

と聞かれてやめた。じいさんなら柔道はみんなやっていた世代だろうから、前回り受け身がなんなのかわからなかったということはすなわち形がなんなのかわからなかったということだろうし。「違います」と一言答えてさっさとその場を去る。やっと一時間。起こすと、ヒロが「わりいね」といいながら出てきた。上馬君はそれでも眠そう。無理矢理揺り起こすヒロ。一番迷惑しているのに悪い気がする僕。岸本さんの方は…それはもうすごい眠り方をしている。そりゃあもう眠かったんだろうな、と思うほどのねむりっぷり。それでも起こす僕ら。起こすと岸本さん、おきたすぐから目を丸くして「はい?はい?」と聞き返す。どうやら状況がよく分かっていないらしい。しばらくすると、「ああ、自分らか。」と言い、むくむくとおきてきた。

「あー、よお寝たわ。」

と岸本さん。おきながら寝ている上馬君。とりあえずみんなそろってコーヒーだ。岸本さんはぬれた丸太の椅子に腰掛けて自爆したり。僕はすでに体中がうっすらとぬれているから気にしない。僕はカメラをかまえ、不意打ち気味に彼らを取った。みんな眠そうな顔をした写真が取れた。しかし、この後カメラの事を忘れてしまい、写真は旅行中5枚しか撮れなかった。バカ。また前回り受け身をとる僕。岸本さんもやってくれたので、まだまだ僕も続ける。5回目ぐらい続けてやっていたら、いつのまにか岸本さんはやめていて、丸太の椅子に座って、コーヒー片手に

「元気やな、自分」

 と冷たい目で言うのでやめた。何てひどい人だろうと思った。9月なのに若干寒い。ぬれたからだろうか。

 

 

 

 またスタート。自動車は快調に進み、直江津、上越の町を上から見下ろして進み、枕崎あたり(覚えてない)で高速道路をおりる。怪しげな看板立ち並ぶ海の近くの町をすり抜け、車は線路と並んで海沿いを走る。ここでまた一休み。さっきまでの天気とは変わって、今度は澄みとおった青空のもと、海を見る。よく分からない国籍の船(多分漁船・失礼)なんかがそこらへんを進む。

「きれいやなぁ」

とかっこつけかげんに言う岸本さん。ボケーとしながら海を見つめるヒロ。なぜか戦う僕と上馬君。新潟に来たと思うと若干感慨深いものがあるがあるが、まだわかいからよくわからない。

 車再スタート。車は内陸方面に向かって走り、天橋立以来急激に上達した岸本さんとヒロがお互い助け合いながら新潟路を走る。長岡あたりで込み合い、白根のあたりで大渋滞に巻き込まれながら、新潟にやっと到着。新潟でも散々迷子になりながらすすむが、新潟という町は、そこそこ都会、という部分が妙に広大で、何処にいるのかさっぱりわからず。なんせ田中角栄お膝元の町。福井と比べれば大都会の町である。駐車場もせまいし、何処までも同じ規模の都会然とした町並みが続く。歴史の浅い感じの新しい町が続き、散々迷いながら、とりあえずはロイヤルホストで昼食。僕はカレー。あまりおいしくないカレー。その他のメンバーも、ファミレスっぽくないなんとなくな食事をとる。その駐車場で宿ミーティング。公共宿などは当然のごとくいっぱいだったので、駅前のホテルをとった。ホテルにチェックインすれば駐車場も止め放題である。駅前に付くのも一苦労だったが、そこら中を回ってやっとこ河口付近に駅前を発見した。駅前の方はやはりそれなりの歴史を感じ、どこか情緒もあるが、おもて通りの方は何か間違った都会と言った感じの若者が見られる。東京在住の上馬君、尼崎出身の岸本さん、岐阜、名古屋に適当に出てくる僕、福井のエキスパートヒロ、誰が見ても感想は、なんか違う感じの都会である、新潟。駅前には洗練された都会の服を、いなかっぽく着こなす女子学生、髪の毛がすごい色をしているのに、おかっぱの女子学生、ガクランに鞄という真面目っぽい服装で不良を気取った感じの男子学生。なんじゃこりゃ。

 とりあえず僕らは二組に分かれて自由行動を開始。ダイエー内の本屋で菅野美穂の写真集(当時話題の)が平積みされているのを見てすごいっすね、岸本さん!と僕が振ると、どこもこんなもんやろ、と岸本さん。そうやも知れぬ。今度は紀伊国屋書店へ行って某アイドルの本を見たりと、ただの買い物をする僕。どこがどう観光旅行?

そこらへんの本屋を歩いてまわって、疲れた岸本さんと、ぜんぜん疲れてないけど腹が減った僕はとりあえずホテルに戻って一休み。するとヒロと上馬君が登場。

「菅野美穂の写真集なかったぁ!」

と。どうやら彼等、新潟までわざわざ菅野美穂の写真集を買いに来ていたらしい。

「なんや、そんなもんダイエーあったで」

と僕ら。

「何で買わんのだ!」

知るか!そんなもん。ヒロは早速車に乗り込み、僕と疲れきった岸本さんを車に乗っけてダイエーへ。ダイエーにも菅野美穂写真集はなく、時既に遅し。

「おーのー!!!」

 ヒロが心底無念そうに叫ぶ。仕方なく、そこで晩御飯。孫悟空という名のラーメン屋で、孫悟空というメニューを頼んでお腹をみたし、再び宿へ。宿に帰ると岸本さんはそのまま突っ伏して睡眠開始。

 

 

 

 

 

 僕はまだ暇なのでホテルの浴衣を着込んで隣の部屋に遊びに行きまして。

「岸本さん寝てもうたで。」

僕はそう言いながら隣の部屋へ。入って見ると隣の部屋ではさっそくエロ映像が流れていたが、あまり面白くない。やはり旅先まできてエロ映像を見てもなんとも。運転組の小林ヒロもしばしエロ画像の評論を行っていたが、三人そろって「つまらん」では話にならず、そのうち寝てしまった。一方の僕と上馬君も、まさか闘うわけにはいかず、また静かにしゃべるような事もなし。

「二人でしゃべってくれ。」

と言い残したヒロだが、いくらナビ組でも疲れている僕らに、いきなり間をつなぐトークをしろと言われても、無理というものではあるまいか?だいたいホテルは明かりが暗い。新潟の話題をしばらくしゃべるとはなすこともなくなり、僕もとりあえず部屋へ。部屋でさっさと寝る。

 

 

 

 

 おきる。新潟の朝は、新潟の朝でしかない。違った感じの朝になるかと思ったが、ただのホテルの朝だった。温泉の朝のように外を見ると気持ちが良いというものでもなく、無機質な都会の、妙な明るさの朝。さっさと着替えて歯を磨いた僕と岸本さんは、隣の部屋を襲ってこようとしたが、二人とも起きて着替えていた。起き抜けにプロレスごっこをはじめる僕と岸本さん。僕のバックドロップがベットの上に炸裂すれば、岸本さんは床に寝転んで「カマーン」と猪木張りに挑発。僕がアキレス腱固めを決めれば岸本さんのドロップキックが炸裂。上馬君にもベットの上から引き摺り下ろしアキレス腱固め、そして裏アキレス腱固め。そうこうするうちに岸本さんのスリーパーホールド、不発に終わり、キーロックに持ち込もうとする僕に対し、巧みなグランド技を見せる岸本さんがボストンクラブに持ちこみ勝負あり。この借りはいつか必ず…。引きつった笑顔を見せつつも、迷惑そうなのはヒロ。満足した僕と岸本さんと上馬君。

 とりあえず目的地を決めるミーティングをし、どこで車中泊しようかしゃべっていると、岸本さんが、「俺、今日バイトやから」という悪魔の一言。

「俺だけ先に帰ってもええで。」

と笑顔で言う岸本さんだが、まさかそんな訳にもいかず、さっさと帰路に就く事になった。田中角栄記念ツアーが…。酒蔵周りが…。すべての計画は水泡に帰したがまだ若い僕ら、かえると決めたら迷わず帰路へ。

 

 

 

 

 帰り道、あらこんなところに、マクドナルド。マクドナルド兼自動車展示場発見。自動車を見つつハンバーガーを食う。ハンバーガーは100円だったので、五個頼んで食う。五個食ったのにみんなまだ食いつづけているので、上馬君と反対側のジャスコに行って来たりして。ジャスコの本屋にも菅野美穂の写真集はない。そのまま帰るのもなんなので、買い物かごで遊んだりしていたのに誰も相手にしてくれず、失意のままジャスコを後にする。自販機でジュースを買おうと自販機を見るとアクアマリンというブランドの得体の知れないジュースが。なんだかわからず、それを買う上馬君。僕の目は次の瞬間得体の知れない妙な文にアジャストする。

君の瞳はまるではしゃぎすぎた午後の中畑のようさ

なんじゃこの落書きはぁ?僕と上馬君は得体の知れないこの文字にしばし恐怖を感じ、沈黙。しかしながらやはりわけがわからず、妙にはまってしまい、そのままお互いに

「午後の中畑?」

「おおう、ご、午後の中畑。」

「君の瞳はまるではしゃぎすぎた午後の中畑のようさ!」

なんか呪文を覚えた子供のようにそれを唱えまくる僕。ヒロと岸本さんが待つマクドナルドへ。ヒロは展示車に乗り込みひどく御満悦。僕と上馬君は顔を見るなり、口をそろえて

「君の瞳はまるで午後の中畑のようさ!」

と指差す。変な宗教団体のようで、得体の知れない感じがしたのか、岸本さんとヒロはその場を離れようと急いだ。

 マクドナルドの歌がある、とかの外の看板を見るが、僕は「だだっだっだ!シェーンマック!」とやるばかりで全く意図を理解しない。マックの歌がシェーンマックの歌というのは意外に受けて4人で爆笑。とりあえず午後の中畑以来ちょっと壊れつつある僕。車は新潟のインターチェンジへ。

 新潟インターからは一気に金沢まで高速道路で急ぐ。何でもヒロと上馬君は金沢の待ちで菅野美穂の写真集をゲットする気らしい。ひたすらに急ぐ車だが雨が降り、トランシーバーでの受信状況や、岸本さんのタイヤの状況を考え、車はしばしば休憩を入れながら進む。車は新潟県内のサービスエリア(忘れた)へ。そのサービスエリアは精力的に商売を行っており、いきなりイカ焼きなどを売っている。僕はお土産コーナーを見たが、特に欲しいものはなく、新潟で何も得ずに福井にもどる事になった。ヒロのほうはコシヒカリアイスというものを買う。興味津々の上馬君とアイスを食っている。僕も食ってみたが、たいして普通のアイスと変わらない。何じゃこりゃと思ってみたら、ヒロがだまされたと笑いながら言い出した。どうやら何の変哲もないバニラアイスクリームの中に少しお米の粒を入れただけという最悪のパターンでオチがつき、悔やむに悔やめない状況らしい。むう、おそるべしはコシヒカリ、その名だけでとりあえずコシヒカリアイスを作ってみる素晴らしさ。さらにそのアイスクリームには、何の工夫もないただの米粒を入れるという根性、おそれいったよ新潟県。岸本さんはイカ焼きを食って満足げ、上馬君は

「コシヒカリの原産地は福井なんやざ。」

と、語気を荒げている。うーむ、なんだかわからない町だ、新潟。

 

 

 

北陸道の途中で僕と岸本さんは運転をチェンジ。そのまま金沢の町へ。金沢では菅野美穂の写真集を買うのに躍起になっているJL組に振り回されて道に迷ってみたり、本屋に入って見たり。そのまま付き合っても疲れそうなので、僕と岸本さんは帰った。車の運転は、もう一度岸本さんに変わり、残っているハイカで金沢西インターチェンジに乗る。

ここで琵琶湖一周の後に徹夜で新潟に行き、次の日戻ってくるという激動の二日間を終え、その後バイトに行くというとんでもない生活をしている岸本さんを更に地獄に突き落とすアクシデントが発生する。

「あれ、窓が閉まらん。」

なんと、パワーウインドウが故障したらしい。高速道路で60キロ以下で走るわけにもいかない。雨が降っている。なのに窓全開。岸本さんはくやしそうに笑いながら、

「くそー、さむいっちゅうねん!

とインチキ関西弁炸裂。徳光PAでみてみてもわからず。ガソリンスタンドが無い事にはなしにならず今度はAサービスエリア(仮名)へ。

なおしてもらい入ったAサービスエリア(仮名)の貝石油(仮名)へ。貝石油(仮名)は混んでいて、二台三台待ちとなっていた。5分またされてハイどうぞと貝石油(仮名)の店員。

「すいません、パワーウインドが壊れたんですけど。」

「ああ、うちではむりです。」

 「そうですか。」

わずか10文字の言葉で5分が無駄に。岸本さんは顔が笑って目が笑ってない。

「貝石油(仮名)なんか二度と使うか、ボケー!」

と岸本氏。新潟で作った貝石油(仮名)のカード(全国各地で一生使える)をわずか7時間で捨てることに。あわれ岸本氏、身体をぬらし、車の一部分をぬらし、そのままバイトへ。僕は、どうする事も出来ず、ただ彼を見送った。

 

 

 

その後岸本さんはバイトに行き、結局写真集が買えなかったJL組が、バイト先でごみ袋を窓ガラスに当てて応急処置。新潟旅行で得た収穫は、「カローラのパワーウインドウは壊れやすいらしい。」という教訓だけであった、というおそろしいオチ付きで旅は終わった。それにしても岸本氏…。

 

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